愛すべき鏡花作品数あれど、
この程好い擬古加減は心地が良い。
ましてや、この心底強靭な愛。
透徹な、揺るぎのない信義。
「義血侠血」
この作品は、「滝の白糸」として新派劇にもなっているらしい。
余談ですが、泉鏡花は紅葉の弟子。
この劇化にあたり、
余りにも目につく脚色過多に紅葉が憤慨、
興行元に猛烈抗議を行ったという話。
今に言う、著作権保護の掩護射撃ですね。
野に放った作品には拘泥のない鏡花も、
好きなのです。
作品中、
ある女性を見目で表現するくだり…
「…その年紀(としごろ)は二十三、四、姿は強いて満開の花の色を洗ひて、清楚たる葉桜の緑浅し。色白く、鼻筋通り、眉に力味ありて、眼色に幾分の凄みを帯び、見るだに涼しき美人なり…」
もののけや、美しき眷属が
跋扈跳梁する鏡花作品も、
たとえば「天守物語」なども
愛すべきものです。
…百年も前、明治の御代の
ロマンティシズム。
ああ、その行間。
美しき想像を心に
招き入れるその「ことのは」。
ああ、
そんなお酒をグラスに紡ぎたい。
お客様に供したい。
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